シャモニー VI

2023/06/16-07/01

旅程寸描

▲ヴァロ避難小屋の先からモン・ブラン山頂部を見上げる。(2023/06/28撮影)

シャモニーにはこれまで5回(2014年2015年2016年2019年2022年)通っており、このうち7年前の2016年には日本国内でのクライミングで頻繁にロープを結んでいるセキネくんを案内していくつかのクライミングルートを登ったのですが、今日に至るまでお互いにシャモニーには登りたい山を残していました。それは、私にとってはグランド・ジョラスとドリュであり、セキネくんにとってはモン・ブランです。

昨年の3週間に及んだシャモニー+ドロミテ山行でさすがにやり尽くした感のあった私ですが、そのときは時期が遅かったために雪稜ルートをひとつも登れていなかったことと、セキネくんからの強い希望もあって今年もう一度シャモニーに足を運ぶことにし、まず私の方が自分の山行のためにガイドと日程調整を行ったのが昨年(2022年)末のこと。その結果、ガイドの都合と自分の都合を重ね合わせて2023年6月18〜25日を私のガイド登攀の期間とし、そこに接続するかたちでセキネくんとのモン・ブラン登山を実施することにして航空券や宿の手配を進めました。

ところが、少しのんびりしている間にモン・ブラン登山最大の核心部とされる山小屋予約のタイミングを逃していたようで、はっと気づいた3月下旬に予約サイトを覗いてみたところ、すでにグーテ小屋もテート・ルース小屋も満室状態。ただし、テート・ルース小屋に併設されているキャンプサイト(テート・ルース・ベースキャンプ)にはまだ空きがありました。

このキャンプサイトに関する諸条件は次の通り(FFCAM=Fédération Française des Clubs Alpins et de Montagne)です。

The municipality of Saint-Gervais has authorised the FFCAM to set up and manage a base camp at Tête Rousse. Individual tents are forbidden along the entire route.

Accommodation at Tête Rousse base camp includes tents with camp beds. There is no duvet, blanket or pillow. Bring a very cold sleeping bag. A catering offer is possible at the refuge. A catering offer is possible at the Tête Rousse refuge.

The rates are as follows:

  • Full price: €30
  • Reduced rate (member of the FFCAM or a partner association, under 26 years old, professionals not members of the FFCAM): €15
  • FFCAM-licensed professionals and FFCAM federation officials: Free
  • Non FFCAM-licensed professionals: €15

かつてはモン・ブラン登山に山小屋の予約は必須ではなかったのですが、頻発する事故に対応するために登山者数を絞り込むべく2019年に地元の自治体の条例が変わり、今はルート上のいずれかの山小屋の宿泊予約がとれていないと登山することができません。そして、コスミク小屋側からのルートは時期により雪崩のリスクが高まるため我々は安全策としてテート・ルース小屋 / グーテ小屋側(ノーマルルート)からピストンする計画にしているので、現状ではこのキャンプサイトを利用しない限りモン・ブランに登る方法はありません。

かくしてテート・ルース・ベースキャンプを予約した我々は、それぞれ旅行直前には富士山に登るなどの準備を進め、そして各自のスケジュールに従いシャモニーへと旅立ちました。

旅の結果としては、モン・ブランには登頂することができて目的のひとつを果たすことができたのですが、私自身の希望であったグランド・ジョラスとドリュとには登ることができませんでした。前者はノーマルルート上のセラックが危険すぎ、後者は起点となる山小屋が整備中ということでいずれも断念せざるを得なかったためです。山というのはこちらの都合や思いだけで登らせてもらえるものではないということをあらためて思い知ったかたちですが、しかし、それが山というもの(That is mountain.)。その代わり、ガイドが提案してくれて実現したモンテ・ローザ山群の縦走は極めて充実した山行となり、おかげで図らずもモン・ブランとモンテ・ローザというヨーロッパアルプスの標高1位と2位に登れたので、自分としては満足のいく山旅だったと言うことができそうです。

また、これまでヨーロッパアルプスには20年間で12回通いましたが、さすがにいい歳になってきたので今回の山行をもって区切りとするつもりです。海外での登山・登攀・トレッキングはヨーロッパ以外にもキナバルキリマンジャロヨセミテエベレスト街道NZでのトランピング韓国でのアイスクライミングなど硬軟長短いろいろ体験してきましたが、どれをとっても楽しく思い出深い山旅を今まで重ねてこられたことを、心から幸福に思います。

行程表

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日程 行程
2023/06/16 羽田からドバイ経由、ジュネーヴへ。さらに乗合バスでシャモニーへ。
2023/06/17 ブレヴァンとエギュイ・デュ・ミディで高度順化。
2023/06/18 エギュイ・デュ・ミディのローレンス稜〜コスミク稜継続。
2023/06/19 グランド・フローリア「Manhattan」。
2023/06/20 エギュイ・ダントレーヴ。
2023/06/21 エギュイ・マルブレ。
2023/06/22 エギュイエット・デ・ラ・フローリア「Robin Wood」。
2023/06/23 モンテ・ローザ縦走。
2023/06/24
2023/06/25
2023/06/26 休養日。
2023/06/27 モン・ブラン登頂。
2023/06/28
2023/06/29
2023/06/30-07/01 シャモニーからジュネーヴへ。ジュネーヴからドバイ経由、羽田へ。

参考情報