カラ・パタール登頂
2025/11/11
△08:00 ロブチェ → △11:00-12:40 ゴラクシェプ → △14:55-15:10 カラ・パタール → △16:05-25 ゴラクシェプ → △18:15 ロブチェ
今日はロブチェからゴラクシェプ経由で「三つのピーク」の二つ目となるカラ・パタールに登り、その日の内に同ルートをロブチェまで戻ってくる日です。昨日のコンマ・ラ越えの疲労が残っていて少々大変ですが、がんばります。

さすがメインストリート、朝から大勢のトレッカーが歩き出しています。同様にヘリコプターの往来も多く、それらのかなりの割合は高山病にやられたトレッカーを下界へ下ろすためのレスキューのようです。


おっ、あのボルダーは2018年のEBCからの下りの際に小休止したところではありませんか。その少し先の「Pyramid International Laboratory-Observatory」の看板と合わせて、なんとも懐かしい思いがこみ上げてきました。

……などと感慨にふけっていると、どこかで聞いた覚えのある声で「日本の方ですか?」「奇遇ですね!」という声が掛かりました。もちろんそれは島トリオで、プモ・リを背景に意気揚々。彼らはこれからEBCを訪問した後にゴラクシェプに泊まり、明日、カラ・パタールに登ろうとしているところです。そしてここにいないOさんは、今日はチェパと共にロブチェ・イーストのHCに上がっています。ただ、このときの私は「今日は高度順応のためにHCにタッチしたら、またロブチェに降りてくるのだろう」と思っていたのですが……。


それにしてもこの道は大賑わいで、登る人、下る人、背に人を乗せた馬、荷を背負ったヤクなどがひっきりなしに行き交っています。そうした中にはカラ・パタール登頂を終えて下ってくるハイジさん一行も含まれていて、すれ違った後に声を掛けて短く挨拶を交わしました。お互いに、この環境を楽しんでいきましょう!

プモ・リを後ろに置いたカラ・パタールとその麓のゴラクシェプが見えてきました。なるほど、確かにカラ・パタールは雪をかぶっていてその特徴である黒い山ではなくなっており、チェパが「カラ(黒)・パタールではなくシロ(白)・パタールだ」と笑っていた通りの姿をしています。


ゴラクシェプのロッジに入って、まずはランチタイム。ここは極力カロリーの高いものにしようと選んだのはチーズたっぷりのピザとコーラで、これらを平らげた後、お腹がこなれるまで30分ほど休憩をとりました。これが効果てきめんだったので、後日ゴーキョ・リに登るときにもこのピザとコカ・コーラを注文することになりました。

いざ出発。カラ・パタールの斜面にはところどころにこうしたベンチが設置されており、疲れたらそこに腰掛けて休みながら展望を楽しむことができます……が、どのベンチも妙に脚が長くて、平均的な日本人体型である私が座ると足が浮いてしまいます。これは欧米人サイズなのか?

ベンチを見捨て、一歩一歩踏みしめるように足を運んで登り続ける先には、プモ・リの特徴的な山頂部が頭を覗かせて我々を見下ろしてきます。

ゴラクシェプから2時間余り、やっとカラ・パタールの山頂に到着しました。「三つのピーク」の二つ目です。
山頂からの360度パノラマ動画。どちらを向いてもいい眺めです。このピークの人気が高いわけがよくわかります。

こちらはエベレスト方面。二つのピークのうち左奥がエベレストで、右の鋭い山はヌプツェの一部です。そしてエベレストの足元から流れ出しているアイスフォールが氷河に合流するあたりから下流にかけての右岸がEBCの所在地で、今はオフシーズンであるためにテントは一つも見当たりませんが、この光景のどこかに島トリオもいるはずです。

ゴラクシェプに宿をとれているなら夕暮れまでこうしていたいところですが、我々はロブチェまで戻らなければならないので早々に下山を開始します。

我々と同様に下っていく登山者もいれば、この時間帯から登ってくる登山者もいます。登ってくる人たちは、カラ・パタールの上からのサンセットビューを見ようとしているのでしょう。

ゴラクシェプに降り着きロッジに立ち寄ってコーヒーを1杯飲んでから、引き続きクーンブ氷河沿いの道を下流へと下ります。すでに日はずいぶん翳ってきており、この道を歩くトレッカーの姿もありません。どうやら明るい内にロブチェに帰り着くことは難しそうです。


下り道の途中から振り返れば、プモ・リもヌプツェもオレンジ色に染まって「早く帰れ」と我々をせき立てているようです。

日が落ちた後の残照はずいぶん長い間我々を助けてくれましたが、それでも歩くほどに周囲は暗くなってきました。ところがここで衝撃の事実が判明。ソナムはヘッドランプを持ってきていなかったのです。私はと言えば日本人登山者の常識としてヘッドランプを常に携帯していますし、月が下弦の半月に近い月齢でしたから日没後に月明かりを使えないことも織り込み済みです。それでもなるべくヘッドランプを使わずにぎりぎりまで行こうと足を速め、そのうちシェルパ族と日本人のどちらが夜目が効くかという民族の威信をかけた競い合いになりましたが、ロブチェまであと20分程度というところでとっぷり日が暮れたためさすがに停戦協定が成立し、私のヘッドランプを最大照度にして残りの道のりを歩きました。


ロッジに帰り着いて今日の夕食はダルバートにしましたが、エベレスト街道のメインストリート上のロッジとは思えない貧相さに些かがっかり。しかもナルゲンボトルに入れるタトパニも700ルピーもして憤懣やるかたなしです。ところが部屋に戻ってふと見るとコンセントがあり、ちゃんと電気が使えました。なになに?充電し放題と言うこと?とここで機嫌を直した私は、スマホ、ヘッドランプ、それにモバイルバッテリーまで片っ端から充電していきました。