塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

ナイアガラ

2007/09/23

前夜、日付が変わる頃にホテル館内に火災警報が鳴って「待機せよ」といったアナウンスが15分ほども流れ続けるというアクシデントがありましたが、それもやがて収まって至福の眠り。明けてこの日はオプションでのナイアガラ滝ツアーです。オンタリオ湖沿いの1時間20分の快適なドライブの後に盛大な水煙を上げる巨大な滝が目の前に現れ、現地ガイドO氏から「これがナイアガラの滝です。虹もご用意させていただきました」とのアナウンス。引き続き「くれぐれも落ちないで下さいね」「今まで落ちたお客はいるんですか?」「それはノーコメントで」といったやりとりがあって、滝に沿った遊歩道をしばし自由散策となりました。

ナイアガラ滝はエリー湖からオンタリオ湖へ流れるナイアガラ川の途中にある高さ50数mの滝で、ゴート島でアメリカ滝とカナダ滝に分かれ、カーテンのように横に広がるアメリカ滝が幅260m、馬蹄形のカナダ滝が幅670m。上流から生き物のようにうねり流れ下る膨大な量の緑の水がどうどうと音を立てて奈落の底へと落ち込んでいき、その落ち行く先は吹き上がる水煙でまったく見えません。想像していたよりコンパクトではありましたが、それでもこんな滝に落ちたらひとたまりもないだろうと思わせる威圧感がありました。

ところが実は、これまでに何人かがこの滝に飛び込み生還しています。その最初の人物は63歳の女性教師で、日常に飽きた彼女は富と名声を求め、樽に入って上流からドンブラコと流されそのまま滝壺へ落ちていきました。しかし樽は無事に浮上し、彼女は見事に生還したのだそうです。なお、樽に入るときに彼女はたまたますりよってきた黒猫の首をむんずとつかみ樽の中に同行させたところ、樽が回収されたときには猫の毛は恐怖のあまり真っ白になっていたという話があるそうですが、これは現地ガイドO氏の言なので話半分に聞いておいた方がいいかもしれません。その後も滝に挑んだ者は何人かいて、ある者は成功しある者は失敗しましたが、3年前にはあるスタントマンが生身で飛び込み生還を果たして、その代わり多額の罰金を支払う羽目になったそうです。

この滝は今から12000年前の氷河期の終わりとともにナイアガラ断層に出現し、その後1年間に1mのスピードで川床を浸食しながら後退を続けていましたが、現在では滝の上流にあるコントロールゲートによって流量が調節され、滝の進行速度は年数cmに抑えられているそう。それでも、このままたてば100万年後には滝はエリー湖に到達するそうで「……ですので、次に来るならぜひ100万年後に」と現地ガイドO氏は勧めていました。

ナイアガラ滝の名物といえば遊覧船「Maid of the Mist」による滝壷へのアプローチです。大人CA$14.00の料金で、青いビニール合羽をもらって船に乗り込み首尾よく舳先に位置を占めることに成功すると、船はアメリカ滝の前を優雅に通り過ぎそのままカナダ滝の馬蹄の真ん中へ向かいました。近づいて行く間は滝の高さや水の迫力に感心しきりでしたが、船が滝に最も近づいた地点で静止(水流と同じ速さで逆行)すると水しぶきでほとんど何も見えなくなってしまいました。

存分に滝のエネルギーを堪能した後は近くのレストランでバイキング形式のランチ。この日まで粗食に耐えていただけに、ここで思う存分サラダやフルーツを食べました。

後は、近くで穏やかに渦を巻く屈曲点Whirlpoolを見下ろして、Floral Clockに立ち寄ってから、ナイアガラ川を下ってオンタリオ湖畔に達し、ナイアガラ・オン・ザ・レイクの町に車を停めてしばし散策タイムとなりました。

ナイアガラ・オン・ザ・レイクは18世紀に建設され、カナダ開拓時代の最初の首都機能(総督府)が置かれた町だそうです。そうした古き良き時代の建築様式を風致地区的に保存した、とても美しく優しい町並みがのどかな湖と森とに囲まれて広がっていて、ぼんやりと目的を持たずに散策するのによい場所でした。

この辺りにはワイナリーも多く、その一つに立ち寄って甘〜いアイスワインを試飲させてもらいました。そこそこの値段はするものの、日本で買うのに比べればずっとリーズナブル。お土産に買って帰ろうかとも思いましたが、今の規制では機内に液体を持ち込むことができません。もちろんトランクごと預けてしまえればいいのですが、この短期間の旅行にトランクを持ってきているはずもなく、手持ちのバッグでは強度がなくて乱暴な扱いを受けると瓶が破損する恐れがありそうです。そんなわけで残念ながらここでの買い物は見送りました。

往路を戻ってトロント市内に入った車は、昨日てくてく歩いて回った新旧市庁舎や州議事堂をぐるりと巡り、最後になぜかビーバーの毛皮を扱っているお店に案内されました。まあこの手のツアーではお約束の買い物タイムで、これが「トロント紅葉の旅○日間有閑マダム編」といったツアーならけっこう喜ばれたでしょうが、何せ家財道具一式を質屋に入れてRushを観に来ているような人々のツアーですから、ほとんど何も売れなかった模様です。さすがにそれではお店も気の毒なので、私はうさぎの毛玉がついたキーホルダーをいくつか買ってお土産のネタとすることにしました。

これでツアーのイベントは全て終了です。