5th Lake往復

2025/11/15

△07:55 ゴーキョ → △09:15-40 4th Lake→ △11:30-12:10 5th Lake → △14:00 4th Lake→ △15:25 ゴーキョ

今日はゴーキョを起点にゴズンパ氷河を上流へ進み、5th Lakeを訪れます。昨日の記録に書いたように、ゴズンパ氷河にはその右岸に下流から大小五つの湖(Gokyo Lakes)が間隔をおいて連なっており、ゴーキョの湖が3rd Lake。そしてそこから上流にあるのが4thと5thです。なぜこのように湖が並ぶかと言えば、昨日目にしたように、また地形図を見てもわかるとおり、氷河はその側面に自分が削り運んできた岩石をまるで堤防のように堆積させており、この側堆積堤(ラテラルモレーン)が山側から流れてくる水を堰き止めるからです。

5th Lakeからさらに奥へ進んでゴズンパ・ツェ(5553m)の山裾を回り込むと、いくつかの湖がかたまった盆地に今では使われなくなったチョ・オユーBC(ネパール側)があり、当初の私のプランではそこを目指すことになっていたのですが、一つには10月末の大雪の影響でそこまでの道が雪に埋もれている可能性が高いこと、もう一つには私の歩く速度ではワンデイでの往復は難しいというソナムの判定[1]から、5th Lakeまでの往復にダウングレードせざるを得ませんでした。

そんなわけで出発はゆっくり目の8時。上の写真でわかるように、最初は氷河のモレーン(右の黒い斜面)と右岸の山(左の白い斜面)との間を歩きます。

1時間ほどで見えてきたのは4th Lake(現地名Thonak Tsho)。ゴーキョからここまでなら軽いハイキングですが、それでも十分に趣きのある景観を味わうことができます。

4th Lakeからさらに北に向かう道は雪に覆われ、その上に踏み跡がつけられています。前方に高く大きく見えている山はチョ・オユーです。

4th Lakeまでは平坦な歩きやすい道でしたが、5th Lakeに向かう踏み跡は途中から谷筋を離れてモレーンの上の起伏の多いところを進むようになりました。地形図を見ると道を示す点線は4th Lakeと5th Lakeの間でも一貫して右岸の山とモレーンの間の歩きやすそうなところを通っているのですが、おそらく10月末の大雪の後は左の山からの雪崩のリスクを避けるためにこちら側を通るようにしたのだろうと思います。

4th Lakeから2時間弱、5th Lakeが見えてきました。奥の白い山々は7000m峰を連ねるネパールとチベットとの国境稜線、右手前の黒いなだらかな山はゴズンパ・ツェで、チョ・オユーBCはこの黒い山の向こう側です。

右手、氷河の向こうの金字塔はエベレスト。写真では伝わりませんが、肉眼では大きく立派な姿で見えていました。

それにしても、なんというこの静寂……。湖そのものはとりたてて美しいわけではないのですが、雪と岩とに囲まれてひたすら荒涼としたこの空間には一種の隔絶感のようなものがあって、そのただ中にじっと立っていることがこの上なく幸せなことのように思えてきます。しかし、ここがまったく動きのない死の世界かと言えばそんなことはなく、目の前のヒマラヤの山々は年間2mmずつ隆起していますし、ゴズンパ氷河もゆっくりと流下を続けていて、時折風もないのに岩や砂が崩れる控えめな音をたてています。そして、ゴズンパ・ツェの山裾を横に走る雪の線は、最果てのように思えるこの場所でも人が往来をしていることの証となっています。

ところで、我々が5th Lakeを目指して歩いている途中で一人の足の速い欧米人に追い抜かれたのですが、ソナムがガイドシェルパだと気づいた彼はチョ・オユーBCへの道の様子を訪ね、ソナムが「雪のために何もかも変わってしまっているのでわからない」と率直に答えるとこの回答を了承した上で、周りを見回し「incredibly beautiful!!」という言葉を残して先に進んでいきました。その彼の踏み跡が5th Lakeを見下ろすモレーンの上からさらに先に続いており、見ればゴズンパ・ツェの横を抜けるあたりでルート探しに苦労している様子でした。これを見ても、今日のショートトリップを5th Lakeまでとしたソナムの判断は正しかったことがわかりますが、それでも後ろ髪を引かれるような気分を残しながら、ここで5th Lakeを離れることにしました。

帰路は往路をそのまま引き返します。したがってしばらくはモレーン上の起伏を上り下りしながら歩かなければならないわけで、そのことを思い出すと少々気が重くなってしまいます。

なんとか4th Lakeへ戻ってきて小休止をとり、ここであらためて眺めてみると、湖の手前に円形の石組みが雪に埋もれていました。ソナムの説明によればここはヤクの夏の放牧地だということで、5th Lakeで見た道といい、この石組みといい、人の営みがこの荒涼とした環境の奥深くまで及んでいることに感嘆しないわけにはいきませんでした。

ゴーキョ帰還は15時すぎ。夕食はもちろんダルバートです。ハイジさん一行は今日はゴーキョ・リに登っており、明日はマチェルモ方面へ下るとのこと。よってレンジョ・ラを越える私とはここでルートが分かれることになります。どうぞお気をつけて、最後までよい旅を。

脚注

  1. ^ソナム曰く「BCまで行くなら、テントを持っていってそこに泊まることになります」。これはこれで魅力的なプランですが、もちろん我々はテント泊装備を持ち合わせておらず、日程的なゆとりもありません。