ディンボチェ〜チュクン
2025/11/08
△07:45 ディンボチェ → △10:20-12:35 チュクン → △14:05-25 チュクン・リの途中 → △15:15 チュクン
今日はディンボチェからチュクンまでの短い区間を歩き、小休止後にチュクン・リに登る予定です。


しかし、朝食に注文したベジモモは食べきれず3分の1ほどを残してしまい、お祈りの香草が焚かれる屋外に出てみると寒さが身にしみてきます。ここまで順調な歩きを重ねてきましたが、薄い空気と極端な寒暖差が身体にダメージとして蓄積しており、ここにきてその影響が体調の不良というかたちで表面化したようです。そう言えば昨日歩いているときに喉の痛みを感じていたのですが、これも不調の前兆だったのかもしれません。

それでもまずチュクンまで行ってみないことには話になりません。カトマンズからルクラへ飛ぶのに苦労したことが嘘のように毎日続く晴天は今日も健在で、イムジャ・コーラ沿いの明るい道を上流へと歩き出しました。

しばらく歩いて振り返れば、ディンボチェのロッジ群の向こうには鋭く聳え立つタボチェ。この山がシェルパ族によって神聖な山とされてきたことが頷ける神々しい姿です。

歩くにつれて行く手のアイランド・ピークがその名の通り独立した島のような姿で大きくなってきました。周知の通りアイランド・ピークの現地名はイムジャ・ツェであり、その足元にはイムジャ・ツォという名の大きな湖があって、イムジャ・コーラはそこから流れ出しています。

進行方向右側を見上げればアマ・ダブラムがますます見慣れない形に姿を変えていますが、その左の黒々とした岩峰Amphu Gyabjenのてっぺんの二つの突起は、丹沢でも見られる(笑)トトロの姿を連想させました。


チュクンに到着し、Khang-Ri Resort Lodgeに荷を置いてサンドイッチをランチとしましたが、分厚くボリューミーなサンドイッチは半分しか食べられません。この時点で私の頭の中では、仮にチュクン・リ登頂を明日に回した場合に後行程がどうなるかという計算が働き始めており、予定していたエベレストBC(以下「EBC」)をオミットすることも選択肢の一つとして浮上していました。

ともあれ、体調の様子を見ながら登れるところまでは登ってみようとソナムの案内でチュクン・リに取り付くことにしました。チュクン・リはヌプツェから南に伸びている尾根の末端の小ピークで、ロッジの裏手にまるで里山のようなフレンドリーな風情で穏やかに斜面を広げています。


その見た目の通り、チュクン・リの下部は小灌木の中を縫う歩きやすい道が斜めに続き、その上で雪が出てきた後もあくまで斜度が緩やかな優しい山容が続いていましたが、やはりはっきりと体調不良を感じて足が前に進みません。これは早々に見切りをつけ、登頂は翌日に回す方が得策だと思った私はソナムに「今日はここまでにし、明日もう一度この山に登る」と宣言しました。

この宣言を行った場所の標高は5070m強。これはディンボチェのNangkartshangとほぼ同じ高さで、ここでしばらく休んでいればそれなりに高度順応の効果が得られるはずです。そこで私はここにリュックサックを置いて草の上に寝そべり、一方ソナムは先の雪の状態を確認するために一人で上がっていきました。


20分ほど休んだ後に登ってきた道を下ってロッジに戻り、やがて偵察から戻ってきたソナムに明日のリトライをあらためて告げた後は、ありったけの衣類を着込んでおとなしくロッジで過ごしました。そうは言ってもローツェ南面がオレンジ色に染まる夕焼けは見事すぎて思わずロッジの外に出てしまったのですが、胃に優しそうなシェルパシチューを夕食にとったらただちに自室に戻ってシュラフに潜り込み、翌朝まで12時間あまり、途中何度かのトイレ(小)を挟みながらひたすら眠り続けました。