ナムチェバザール〜パンボチェ
2025/11/05
△07:40 ナムチェバザール → △12:05-13:05 タンボチェ → △14:40 パンボチェ
エベレスト街道を行く場合、ナムチェバザールで2泊するか、あるいはクンデからクムジュンに進むことで高度順応を行うのが一般的で、ロブチェ・イーストを目指すOさんとアイランド・ピークを狙う島トリオもこの定石に従い今日はチェパに引率されてクンデピークに登ってからクムジュンに下ることになっていますが、私はこの行程を省略してソナムとポーターのギャルツェン(以下「Gくん」)と共に一気にパンボチェへ歩みを進めることにしています。つまり、ここでチームが二つに分かれるわけですが、彼らチェパ組とはこの後も行程のところどころで顔を合わせることになります。

いつ見ても美しいナムチェバザールの朝の光景。この天気ならルクラ〜カトマンズ間にはたくさん飛行機が飛んでくれることでしょう。


おいしいトーストセットの朝食をとったらお先に出発。いつものクンデ方向ではなく、水平にキャンズマ方向を目指します。

すぐに視界に入ってきたのはこのすばらしい光景です。左にタボチェ(タウチェ)、奥にエベレストとローツェ、右にアマ・ダブラム。その手前には今日の難関となるタンボチェの尾根が横たわっています。

キャンズマを過ぎてクムジュンからの道を合わせ、逆にゴーキョ方面への道を分けたらルートはぐんと高度を下げてドゥード・コシを渡り、プンキ・テンガのチェックポイントをクリアしてから下ったのと同じくらい標高を稼がなければなりません。登り着くタンボチェには有名なゴンパ(僧院)がありますが、まるで、そこに至るためには苦行に耐えなさいと言われているような地形です。この道を登るときの慰めは、振り返ってみて徐々に自分の高さがキャンズマやクムジュンの高さに近づいていることを目視できることと……。

……右上から見下ろし励ましてくれるタムセルクとカンテガの存在です。


やっとタンボチェに到着し、ここでランチタイムとしました。飲み物はこのルートで定番のジンジャーレモンハニー、食べ物は具沢山で優しい味わいのシェルパシチューです。

タンボチェから上流側にしばらく高度を下げて、ドゥード・コシの支流であるイムジャ・コーラを右岸に渡ると、景観は一気に森林限界上といった趣に変わります。

青いブッダアイがかわいいチョルテンは相変わらず健在ですが、この頃になるとアマ・ダブラムの姿は雲に隠されるようになってきました。この谷筋では晴れている日でもほぼ例外なく、13時から14時頃に雲が下流から上流へ流れるようになり、これが夕方になるととれて再び山々の姿がクリアに見えるようになるというパターンが繰り返されます。


ようやくこの日の目的地であるパンボチェに到着しました。ここはゴンパもあればベーカリーもあり、アマ・ダブラムBCへの登路もあるというエベレスト街道上の要衝の一つであり、また、この旅の中では初めての富士山より標高が高い宿泊地です。荷物を置いたのはSyar Khumbu Lodgeで、少し休んで落ち着いたら宿の裏手の丘などをしばらく散策して身体をこの地の空気に慣らしましたが、ロッジに戻るとソナムが誰かとスマホで会話中で、その表情が妙ににやにやしています。会話の相手もソナムのそうした表情に気がついたらしく「なんで笑ってるの?」「誰かいるの?」などと聞いていましたが、ソナムがスマホを私に渡してくれたところ、そこに映っていたのは昨年のアマ・ダブラムで私を引率してくれたチリンでした。おー、チリン!久しぶり。カトマンズにいるらしい彼との和やかな会話はやがて電波が弱まって画面がフリーズする形で終わりましたが、それでもうれしい数分間でした。……ん?そう言えば君たちは二人ともシェルパ族なのに、どうして日本語で会話していたんだ?


夕食はブラックティーと共に珍しくスパゲティを注文しましたが、前回の旅でも感じたように、当地のスパゲティは例外なく茹ですぎて太った状態で、概してアルデンテ好きの日本人には違和感を感じさせるものです。もっともそれは無理のないことで、標高が高い→気圧が低い→沸点が低い→しっかり茹でなければ硬い芯が残る、という構図なので必然的にこうなってしまうわけです。しかし、もともとさほど舌が肥えているわけではない自分としては、翌日に向けてきちんと栄養素とカロリーが補給できればOKなので、ツナとチーズがたっぷり乗ったこのスパゲティをおいしく平らげることができました。