塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

ラウターブルンネンの二つの滝

2013/07/24

お天気悪し。1日の違いで山はこれだけ表情を変えます。もし登攀日程が後ろにずれていたら、今年もまた涙を飲んでいたことでしょう。昨日の奮闘のリハビリのためにこの日は純粋に観光モードにすることにしていて、できれば『女王陛下の007』で有名な回転レストラン・ピッツグロリアがあるシルトホルンに行ってみたいと思っていたのですが、どうやらそこまで足を伸ばすのはこの天気では無理(というか、意味なし)。よって、ラウターブルンネンの二つの滝の見物でお茶を濁すことにしました。

グルントのゴンドラ乗り場の前の広場には、サーカスのMontiがテントを張っていました。ちょっと気になりましたが大人はCHF50というそこそこいいお値段に尻込みしてここはスルー。

ゴンドラに乗ってまずはメンリッヒェンを目指します。背後に広がるのはグリンデルワルトの谷の全景です。

こちらはメンリッヒェンから見下ろしたラウターブルンネンの谷。すぐ下に見えているのは段丘上に広がるウェンゲンの町で、そこから1段下の谷底がラウターブルンネンです。その向こうにぐっと高く黒い三角形の山頂を見せているのがおそらくシルトホルン。それにしてもこうして見ると、ラウターブルンネンの谷が氷河によってガリガリと削られてできたものであることが一目瞭然です。

メンリッヒェンからグリンデルワルトと反対側、つまりウェンゲンへとロープウェイで下降します。ここは以前ハイキング道を使って徒歩で下ったことがありますが、歩き甲斐のあったその標高差もロープウェイならあっという間です。

ウェンゲンから列車に乗り継いで1駅下る途中で見たのがこの光景です。谷底の町に覆い被さるような崖とその上から真っすぐ落ちてくる滝の組合せは、なんだか浮世離れした雰囲気です。しかしこの滝=シュタウプバッハ滝を見るのは後回しにして、まずはラウターブルンネン駅のすぐ近くから出ているバスに乗ってトリュンメルバッハ滝に向かうことにしました。

谷を上流に向かってしばらく進んだところでバス停を下りると他にも大勢の観光客が屯しています。

モノトーンのセンスのいい看板に期待が高まります。スイス政府観光局のサイトの説明文を借りれば次のとおり。

アイガー・メンヒ・ユングフラウという名峰で有名なアルプスの氷河群からとけだす毎秒・約2万トンの水が、険しい岩の洞窟内を10層の滝となり流れ落ちていきます。トリュンメルバッハ滝(トリュンメルバッハフェレ)に入るには入園料が必要です。

1912年から岩山の内部に設置されたエレベーターで、上部の滝まで簡単にいくことができます。行きはエレベーターでのぼり、帰りは階段でくだりながら、滝を順番に見ていくコースがおすすめです。ラウターブルンネン駅からシュテッヘルベルクStechelberg またはミューレンMürren へ向かうバスの途中にあるので、シルトホルン観光と組み合わせてもよいでしょう。

入場料CHF11を支払って、このトンネルからエレベーターに乗ります。

この図にあるようにエレベーターは第6の滝と第7の滝の間に上がるので、そこからいったん一番上まで階段を上がって、改めて上から下りながら滝を見物するのが正しい見物のしかたということになります。しかし、エレベーターの入口の右手に第1の滝への階段があって、階段と見るとつい登りたくなってしまう私は順路に関係なく真っ先に第1の滝を見に行ってしまいました。

いやー、これは凄い!水の勢いも凄いし、その水が彫琢した岩の造形美も見事です。

というわけで、期待を高まらせながらエレベーターに乗りました。上に着いて順路を歩き始めましたが、もうそこは岩の中の異世界。轟々と水音が絶え間なく響くこの空間は、岩と水との彫刻美術館といった趣きです。

何がどうなるとこういう造形になるのか不思議です。時代によって水流はその位置や向きを変え、複雑な浸食作用を形にとどめてきたのでしょう。

水が激しくねじれて流れるコークスクリューの滝。この滝は半日かけて足を運んで見る価値が十分にありました。

バスでラウターブルンネン駅に戻って、今度は徒歩で町の中を上流へ。シュタウプバッハ滝については、スイス政府観光局は次のように言っています。

氷河によって形成された地形の一つ、代表的なU字谷のラウターブルンネン谷。谷をはさんでいる垂直にきりたった岩山の上から、約300mの高さを真っすぐに流れ落ちるシュタウプバッハ滝(シュタウプバッハファル)。

ほこりや塵を意味するシュタウプという名前がついているように、細かい霧のような水しぶきがたっています。奥の雪山、村の教会、のどかな牧草地が織り成す情景の美しさが絵画のように印象的です。この地を訪れたゲーテは、この滝に感動し、後にシューベルトの歌曲にもなった詩『水の上の精霊の歌 Gesang der Geister über den Wassern』をしたためたといわれています。後にイギリスの詩人ワーズワースもこの滝の想い出を美しい詩節にして残しています。

滝の右下の芝のマウンドへ通じる道は、トンネルを経て滝の裏側へと続いています。

滝の裏側……と言っても、滝の中心よりはかなり左寄り(町から見れば向かって右寄り)。濡れるかな?と思っていましたが、飛沫はそれほど飛び散ってはいませんでした。

見下ろすとこんな感じ。確かに霧のように飛散して降り注いでいる様子がわかります。

改めて下から見上げてみると、300mの高さを実感します。

駅に戻る途中から見上げれば協会の尖塔の左上にはウェンゲンの町、その右上にはメンリッヒェン。

帰りはロープウェイやゴンドラではなく、登山鉄道を使ってクライネ・シャイデック経由でグリンデルワルトに戻りました。この天気、本当に今日が昨日でなくてよかった……と神様に感謝しました。

▲この日の行程。