塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

バルム峠

2015/08/10

今回の旅のメイン・イベントを翌日に控えた月曜日の天気予報はCloudy。この日、現場監督氏と私とはそれぞれに気になるハイキングコースを歩くことにしました。すなわち、現場監督氏はラック・ブランからプランプラまで、私はフランスとスイスの国境にあたるバルム峠です。

8時すぎに外に出てみると確かにすっきりしないお天気ですが、稜線のさらに上を見上げれば青いところもないではありません。

シャモニーの中心街からバスに揺られて30分弱、シャモニーの谷の最奥のバス停=ル・トゥールで降りると、目の前にゴンドラ駅がありました。この辺りはシャモニーの町を挟む針峰とは異なり、穏やかに丸みを帯びた草の斜面が国境稜線まで続いています。

ゴンドラに乗っての空中散歩は背後の景色が素晴らしく、高さを稼ぐにつれてモン・ブランやエギュイ・ルージュの山々の姿が立ち上がってくるようです。

ただ、あいにくバルム峠の辺りでスイスからフランスへと寒気が稜線を乗り越えてきているらしく、そこだけ雲がもくもくと湧き上がってはなだれ込んできていました。

途中駅のシャラミヨンからチェアリフトに乗り換えると、冷気が肌を刺してきます。それでも、眼下のピンクの花に癒されながらぼーっと何も考えずにリフトに運ばれました。

リフトの終点からバルム峠までは水平に歩いて15分。しかし、やはり峠を越えて雲が押し寄せてきているようです。

バルム峠に着いてみればこの通り視界はほとんどなし。まあ、こればかりは仕方ありません。

国境といってもものものしい検問があるわけではなく、標柱石が一つ立っているだけでした。フランス側の面には「FRANCE」、スイス側の面には「SUISSE」と赤く書かれていますが、ここはツール・ド・モン・ブランのコース上でもあります。

バルム峠からシャラミヨンへと下る緩やかな道の途中から見やったシャモニー方面の眺め。スイス側から坂道を登ってきて峠に達し、目の前に開けるこの光景に出会ったなら、誰しも感動することでしょう。右手の平坦地で牛がカウベルをカラカラと鳴らしているのも、何となくスイスっぽい感じがします。

バルム峠からシャラミヨンまで、ゆっくり下って40分。さらにレ・トゥールまで下ればプラス50分ですが、足の調子も気になるし眺めの良さもここまでだろうしで、シャラミヨンからはゴンドラで下ることにしました。

下界に降りてほぼ間髪入れずにやってきたバスは、後ろ半分が自転車の収納場所になっているタイプのものでした。1日のうちに数便、こうしたバスがシャモニーからレ・トゥールへと走っており、自転車の持ち主たちはゴンドラで高みへと登ってから山道を駆け下るようです。

さて、お昼頃にホテルに戻った私には仕事が一つ待っていました。それはアイゼンとアックスに手を入れること。ミディ〜プラン縦走で自分の武器がいかに非力であるかを悟った私は、遅ればせながらこれらの刃物をチューンナップすることにしたのですが、こうして改めて見ると、アイゼンの爪は丸まってしまっていていくら研いでも無駄という感じがします。うーん……と考えて、ここは思い切ってスネルスポーツで新品を購入することにしました。山の安全はお金で買うのです。かたやアックスも本格的なアイスツールではないものの、刃先を研いでおけばそれなりに刺さってくれるようになるはずだと期待して、ホテルの自室のベランダでガシガシとヤスリを使いました。

▲この日の行程。