塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

クラインマッターホルン

2010/07/17

ツェルマット到着2日目のこの日は、休養と準備の日です。早朝、マッターホルンのご機嫌伺いをしてからおもむろに朝食。ホテル1階のレストランでは7時から10時まで宿泊客向けに朝食を提供しており、何種類かのパンと3種類のハムと3種類のチーズと、そしてシリアルやヨーグルトもそれぞれ何種類かずつを好きにとることができます。これらを適当に皿にとりコーヒーを注文して、くつろいだ気持ちでいただきました。

懐かしいアルピンセンターまでは徒歩10分ほど。少し早めにホテルを出て向かうと、ちょうどバンホフ通りの前をツェルマット名物ヤギの隊列が少年によって率いられて行進しているところでした。これを見送ってからこの日の営業を開始したばかりのアルピンセンターに入ると、受付には明るい笑顔のクリスティンが座っています。彼女にも6年前にお世話になったことがありますが、さすがに向こうは覚えていないだろうとそうした話はせず、あらかじめ日本から電子メールで予約してあったリッフェルホルンのトレーニングの手続を行いました。バウチャーを示しながら丁寧にいろいろ説明してくれたクリスティンに最後に「マッターホルンのルートの状態は?」と聞くと、クリスティンは両手を広げて一言「Good!!」。

さて、この日の準備はガイドの手配だけではありません。そう、高度順化が必要なので、この後はゴンドラに乗って楽々登山。クラインマッターホルンまで上がって、のんびり時間を過ごすことにしています。マッターフィスパ川の右岸の道を上流へ進んでゴンドラ駅に着いてみると、あれれ?クラインマッターホルン駅が「マッターホルン・グレイシャー・パラダイス」になっている?改めて観光案内図を見てみると、他にも「シュヴァルツゼー・パラダイス」「スネガ・パラダイス」「ロートホルン・パラダイス」など、ツェルマットの周りはパラダイスだらけになっていました。なんだか浦島太郎になったような気分です。

ともあれ、片道CHF58のところをスイスカードの御利益で往復CHF90でチケットを買って、ゴンドラに乗りました。気持ちの良い眺めが堪能できるこのゴンドラは以前はフーリで乗り換えていましたが、この日は一旦シュヴァルツゼー・パラダイスまで上がって、そのまま左折してフルグとトロッケナー・シュテークを経由し、クラインマッターホルンへと達していました。

薄い空気の中、息を切らせながら階段を登って展望台に到着したのは10時半で、マッターホルンは雲の中で全く見えませんが、近くのブライトホルン(4164m)やその向こうのポリュックス(4092m)、カストール(4228m)、リスカム(4527m)はよく見えていました。目を転じればミシャベルの山々の中、ドム(4545m)らしき鋭鋒も雲の合間に顔を覗かせており、さらにツェルマットの谷間の向こうにはベルナーオーバーラントの山々も遠く見えています。ここからでは山座同定が難しいのですが、視界が良ければユングフラウやメンヒも見えるはず。そんな展望の中に1時間ちょうど滞在してから展望台を降りて、今度は登山靴を履き、アイゼンを装着して雪の上に踏み出しました。クラインマッターホルンのイタリア側は広い雪の台地になっていて、スキーのコースが設定されています。そのコースの端をアイゼンでがしがしと歩くこと30分、これで十分とは言えませんが頭上に雪雲が広がり始めたこともあり、この日の高度順化はこれくらいにしておくことにしました。

昼食は、これも高度順化の一環としてマッターホルン・グレイシャー・パラダイス駅内にあるビュッフェスタイルの展望レストランに入りました、ところがなんと、サラダにチキン、そして水のPETでCHF22.6!標高の高さとモノの値段とは往々にして比例するものですが、それにしてもこの高さには閉口です。それでも隣のテーブルでは年配のおばさま方が巨大なソーセージを乗せたレシュティを食べていて、あちらなんかは私のとった料理よりもずっと高いはずです。よほどお金持ちなのかな?

通り雨に降られながら、不機嫌そうなマッターホルンを横目にゴンドラで下界に降りて、これまた馴染みの「fuchs」でパイを2切れとビールを1缶、それからスーパーのミグロで水とリンゴを買ってホテルに戻りました。

その後はベッドでごろごろしながらテレビを見て過ごしましたが、何しろどのチャンネルもドイツ語なので、どうしてもスポーツのチャンネルになってしまいます。ドイツのどこかの都市で行われていたトライアスロンのデッドヒートを見て、その後はツール・ド・フランス。さすがに自転車が群れをなして道を疾走するだけのレースは見ているうちに飽きてきて、ザッピングしているうちに見つけたのが料理番組です。画面の中のシェフは素材を大胆に扱って凄いボリュームの料理を次々に作り上げていきますが、健康に問題がありそうな人たちが健康に良くなさそうな料理を作る図というのは、実にシュールです。それでも仕上がりの美しさは以前見たアメリカの料理番組とは決定的に違っていて、さすがヨーロッパだと思いました。何しろそのアメリカの料理番組のアウトプットは、何でもかんでもフードプロセッサーにぶち込んでどろどろにしただけの見るもおぞましい料理だったのですから。

▲この日の行程。