塾長の渡航記録

塾長の渡航記録

私=juqchoの海外旅行の記録集。遺跡の旅と山の旅、それに諸々の物見遊山。

パー・テム他

2000/07/21

今日は東の果て、ラオスとの国境に向かう日です。朝8時にトンとホテルで落ち合い、片道2車線の非常にコンディションの良い道をひた走りました。そして9時20分に着いたのがサオ・チャリアンです。

ここはキノコ状の奇岩(Mashroom Shaped Rock Piller)が立ち並ぶ摩訶不思議な景観が売り物で、ジュラ紀の軟らかい砂岩の上に白亜紀の堅い砂岩が乗って下の砂岩が侵食されたためにこのような形になったのだと英語の説明書きがありました。

次にここから少し進んだところで、絶壁の上からメコン川越しにラオスの土地が望まれるパー・テムに到着しました。上から見るメコン川は意外に流れが速く、その茶色の川面にところどころ黒っぽい水が分離しているのはムーン川の合流点が上流の遠くないところにあるからです。右手の下流の方は広々とした大地が広がっていて、やがてこのメコン川はカンボジアを経てベトナムへと流れゆくことになります。島国である日本の川とは決定的に異なる、大陸の川の国際性を実感しました。

さて、岩の大地から右手に下へ続く歩道の入口があり、ここを下ると綺麗な砂岩の崖下に出ました。思わず見とれるほど見事に磨かれた岩の壁と岩の屋根(オーバーハング)の下に道が続いており、しばらく進むと壁面に先史時代の壁画が現れました。これは2000〜3000年前にこの地に住んだ人々による絵だと言われていますが、象・ナマズ・亀・手のひら・たくさんの壺が鮮やかな赤色で描かれていて見飽きることがありません。これらの絵は崖の中ほどの比較的高い位置に描かれていますが、その当時は川岸も今より高い位置にあったということなのでしょうか。

さらに進んで崖が低くなったところから上に登り、ぐるりとまわって元の場所へ戻った頃には既にお昼の時間で、昼食は車でしばらく走ったところにあるメコン川に浮かぶ船上のレストランでとりました。ここには各国の有名人も来ていると見えて船尾の壁にはいろいろな人の写真がべたべた貼ってあり、トンが指差したところには、タイクーをひと呑みにしそうなほどの大ナマズを前にしてなんと我らが秋篠宮様のお姿が……。

公式に開かれているタイとラオスの国境は5カ所あり、そのうち陸路(川を渡らない)でラオスに入国できるのがチョーン・メックです。賑やかな市場が立っているところに車を停めて、目の前の鉄門の横を抜けたところでトンが「さあ、もうここはラオです」と言ったときは驚きました。「国境」だというのにビザはおろかパスポートの確認もなく、自由な往来が実現していたからです。

車道を少し進むと、左下にラオス側の市場……といっても土産物屋を大きくしたものが軒を連ねているようなものでずいぶん静かです。置かれているものを見るとベトナムの物産が多い様子で、ゲート近くの免税店には元フランス統治下にあっただけあってワインが充実していましたが、もっとエキゾチックな土産を買いたいと思って物色した結果40バーツ(=120円)でラオス製のウイスキーを買いました。さらにゲートを通れば元来たタイ側の市場で、山盛りのランブータン、ラムヤイ、マンゴスチンなどの果物類が充実し、打って変わって大変な喧騒でした。

これでだいたい予定された日程は終わりですが、まだ時間に余裕があるのでトンはシリンドーン・ダムに案内してくれました。1971年に完成し、第2王女シリンドーンの名を冠したこのダムが作る透明度の高い水をたたえたダム湖のほとりには王妃のレストハウスやきれいに整備された公園があり、静かなひとときを過ごすにはうってつけ。ただし、お化けのように大きく育ったスパティフィラムやポトスは、さすが熱帯の様相でした。さらに、ウボンに戻る道の途中でワット・プーカオ・ケーオに立ち寄りましたが、ここではお堂の内側のきれいな茶色のセラミックにクメール式の彫刻が施され、天井近くの壁面にはタイ各地の著名なパゴダが浮き彫りにされていました。

最後はワット・ノーン・パープーン(と聞こえました)。広大な森の中にある近代的な寺院で、博物館やらお坊様のパゴダやらが大きいのですが、歴史がある寺というわけではないので自分としてはあまり興味が湧きませんでした。この辺りは時間を余らせたトンが無理やり行き先につけ加えたところという感じです。

これで2日間のツアーの見どころは終わり、ウボン市内に戻ってユウコさんから指令を受けていた彫刻入りのキャンドルを買ってからホテルのレストランでビュッフェスタイルの中華料理をとり、その後に空港へ向かいました。トンは手もちの見どころを総動員してガイドしてくれましたが、せっかくの機会なので自分で事前によく調べて「ここへ行きたい」と希望をはっきり伝えるべきでした。そんな具合にちょっと反省しながら、トンと別れの握手を交わして飛行機に乗り込みました。