メンリッヒェン〜クライネ・シャイデック

2011/07/17

ホテルの目の前はこの景色。これが有名なアイガー北壁で、その上の稜線が登攀予定のミッテルレギ稜です。ツェルマットから見上げるマッターホルンも大きいのですが、こちらはさらに町に近い印象で、まるでグリンデルワルトはアイガー北壁を眺めるために作られた町なのではないかと思えるくらいです。

ホテル1階のレストランでは、7時から10時までこのようなビュッフェスタイルの朝食をいただけます。パン、チーズ、ハム、ヨーグルト、コーヒー、朝から満ち足りた気分。

のんびり朝食を終えてから、まずはグリンデルワルト駅まで行ってユングフラウ・パスをゲット(バウチャーと交換)しました。このパスはグリンデルワルト周辺の各種交通機関(登山鉄道やロープウェイ、バスなど)の大半の路線を6日間乗り放題にしてくれるスグレモノです。そしてその足で向かった先はグルント駅で、この日は前日の移動の疲れをとると共に少しでも高度に身体をさらしておきたいがために、メンリッヒェンからクライネ・シャイデックまでのハイキングに行くことにしています。地図を見ながらてくてくと歩いていくと、途中の踏切で2本のレールの真ん中に大きなギザギザの歯がつけられたレールがはさまっている様子を間近に見ることができました。なるほど、この歯があるから急勾配でも登山鉄道は登り下りできるわけか。

グルント駅までは下り坂で、この道を歩くことで身をもって理解できたのですが、グリンデルワルト駅はこの谷の南側のなだらかな斜面の中腹に作られており、そこからWAB登山鉄道(Wengernalpbahn)はいったん谷の一番低い位置にあるグルントまで下って、そこでスイッチバックしてアイガーの懐へと登っていくのです。ただし、私が乗るのはWAB登山鉄道ではなくGGMロープウェイ(Gondelbahn Grindelwald-Männlichen)ですが、そのゴンドラも緩やかな斜面の上を直線的に高度を上げていきます。

ロープウェイで登っていく途中で後ろを振り返ると、ヴェッターホルン(奥)とシュレックホルン(右端)の岩壁がそそり立っています。これらの岩壁はアイガー北壁とともに屏風のように連なっていて、おそらく古い時代の氷河の働きで削り取られたものなのでしょう。しかし、そうした景観もどんどん悪くなってくる天候の下でくすんでしまっています。

メンリッヒェン展望台に到着する直前、とうとう雨が降ってきてしまいました。

雨の中、メンリッヒェンからの眺めはこんな感じ。アイガーも北壁はかろうじて見えていますが、山頂は雨雲の中に隠れています。

しばらくはロープウェイの駅舎で雨宿りをしていましたが、それほど雨脚は強くならないので予定通り歩くことにしました。その前に西側のウェンゲンへ下るロープウェイ駅を過ぎてちょっと登ったところにある小高いピークに登ってみると、そこからはラウターブルンネンの顕著な谷を見下ろすことができました。とは言うものの雨に煙る谷底の景観はイマイチで、あまりピーク上に滞在する意味もないのでとっととクライネ・シャイデックを目指すことにしました。

道はとてもよく整備されており、途中にはさまざまな花々が咲いていて気持ちの良いところです。

なぜか、賽の河原のようなモニュメントが集中している一角もありましたが……。

およそスイスらしからぬ幽玄(?)の世界。このなだらかな草地にはたくさんの牛が放たれていて、彼らの首に下げられたカウベルの音はこの旅の間中、随所で聞かれました。

雨の中でもそれなりに楽しい1時間の歩きでしたが、クライネ・シャイデックに着く頃には本降りになってしまいました。

こちらがWAB登山鉄道のお洒落なクライネ・シャイデック駅。ここは尾根の上にあって、西がウェンゲンやラウターブルンネン、東がグリンデルワルト、さらにユングフラウヨッホへ向かうJB登山鉄道もここから南へと登っています。駅には改札などというものはなく、来た列車に勝手に乗り込んで、後で社内を回ってくる検札にユングフラウ・パスを見せればOK。もちろんパスがなくてもキャッシュで払えば大丈夫です。それにしてもさすがスイス、定刻になったら出発のベルなどの前触れなしに、いきなりドアが閉まって列車が出発しました。列車もお客も時間にシビアだということです。

グリンデルワルト駅に降り着いて町中へと歩いてみると、駅からすぐのところに我らがモンベルがあり、その隣がCOOPでした。そこで食料品を買い込んでホテルに戻り、自室で昼食をとってから改めて町中へ繰り出しました。

行き先は、このスポーツセンター(Sportzentrum)です。

中に入って右手に、目的のgrindelwaldSPORTSのカウンターがありました。あらかじめメールでこの日の午後に(というのは、この季節の土日は午後しか営業していないから)手続のために訪問する旨を連絡してあり、呼び鈴を押して出てきた女性に名前とガイドの手配を依頼済みであることを告げると、カウンター上の画面で検索してすぐに私のことを認知してくれました。しかし彼女は、顔をしかめてこう宣告しました。「Weather is very very BAD.」えっ、いつまで?「Whole next week.」そんな殺生な……。その後のやりとりで、グリンデルワルトは今週いっぱい天気が悪くアイガー等の登攀は困難であること、しかし火曜日から水曜日にかけてのヴァリス州は「まだまし」なので、モンテ・ローザへの転進は考えられなくもない、ということを確認しました。仕方ない、明日またここにやってきて、そのときの予報次第で転進を考えることにしました。

がっくりしながら外に出てみると、アイガーの岩壁には滝が出現していました。これは凄い。このラインは沢登りの対象に……ならないだろうなあ、きっと。

▲この日の行程。