ガレビ氷壁

2020/01/26

昨夜食べた辛い料理のせいで日付が変わった頃から断続的にお腹が痛くなってしまった私は、滞韓3日目にして早くも絶不調。それでも8時にやってきたJeonさんの車に乗って次なる氷壁を目指しました。

暖冬の中でJeonさんがかろうじて見つけてくれた行き先は、ソウル近郊(北隣)のガレビ氷壁가래비빙벽です。

ここはもともと石切場だったところに自然の染み出しが氷を作っているところで、見た目は氷が非常に薄く「大丈夫か?」という感じですが、近づいてみると意外に厚みがあるのが不思議です。壁面の上へは右側から回り込むことができて、Jeonさんが張ってくれたトップロープでひたすら登り続けることになりました。

実際に登ってみるとやはり氷はしっかりしており、凹凸も激しいのでほとんど引っ掛けで登ることができました。ただし最上部はやや氷が薄く、最後の数mを残したところで下降にかかることの繰り返し。そうやって登っているうちにまたしてもお腹が痛くなってきましたが、ありがたいことにこの氷壁へのアプローチの途中に簡易トイレが設置されており、そこに籠もって心静かなひとときを過ごしたら多少楽になりました。

同じラインばかり登っていても芸がありませんが、幸い右手の壁に掛けられたロープはJeonさんの知り合いが張ったもので、ロープの主は気前よく日本人の我々にもそちらのロープを使わせてくれました。

Jeonさんによる即席アイスクライミング講座。次の1手に向けた体勢を整えるまでは肘を伸ばし続けること、足を強く蹴り込むのは最後の1歩でそれまでは氷の上でスメアリングを効かせるように(と言っても前爪は使いますが)ソフトに足を上げること、がポイントです。打ち込むアックスの親指の位置も要チェックで、繰り返し「アックスを握らないように」と注意を促していました。

こちらの壁ではミックスクライミングも行われており、ハング越えを見せるJeonさんの右隣のルートではミックスルートをリードするクライマーの姿もありました。こういうのを見ると、韓国人クライマーのメンタルの強さを実感します。

改めて正面壁に戻るととんでもない人口密度になっていました。ほぼ1m間隔ですだれのようにロープがぶら下がり、さらに私が登っているときにほぼ同じライン上に上からロープが降ってきたりもしました。

降ってくるのはロープだけではありません。氷も降ってくるし、人も降ってきます。こういうのを見ると、韓国人クライマーの……(以下略)。

ガレビ氷壁はソウル市内から車で1時間ほどという交通至便の位置にあり、氷瀑は北に面して冷えやすいもののその手前側の広場は日が差して暖かく寛ぐことができ、あちこちにキャンパーのごとくランチセットを広げているパーティーの姿がありました。こうした憩いの場・社交の場としてのアイスクライミングゲレンデというのは東京では考えられず、韓国の環境を羨ましく思うと共に、韓国がロシアと並んでアイスクライミング・ワールドカップの常連強豪国になっている理由の一端を垣間見たような気がしました。

この日、ヨーコさんは一足先に日本に帰国し、私はホテルの近くのお洒落なパン屋さんで買い求めたサンドイッチをホテルの自室でとって夕食としました。早くも明日は最終日ですが、Jeonさんからは、ガレビ氷壁以外の場所に行くとなるとソウルから車で2-3時間を要し私の帰国便の搭乗手続を考えると登れる時間がごく限られる上に旧正月渋滞という不確定要素もあるので、むしろ北漢山북한산プカンサンの仁寿峰인수봉インスボンに登るのが良いのではないかとの提案を受けています。クライミングシューズは貸してもらえることになりましたが、ただでさえ苦手な花崗岩のスラブの厳冬期登攀というのは果たしてどういうことになるのか……。